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【9日目~帰宅】ヴィパッサナー瞑想センターでの日々④

修行が始まって間もない頃は、スカアーサナ(安楽座)で座っていられるのはせいぜい20分くらいでした。

 

 

激しくしびれて休み時間になっても立てない、などのピンチも経験しましたが、1日に10時間以上も座り続けていれば慣れるしかないというもので、中盤からは何時間でも座っていられる!くらいになっていました。

9日目の朝、それはもうすがすがしい気持ちでした。修行は、あと1日だけ。
それに、その日は元旦でした。もともと、センターの周りは車も人通りもありませんが、それでも元旦特有の、世間の静けさを感じました。午後の早い時間には雪が降って、それはそれは幻想的でした。
瞑想の時間でしたが、トイレに向かおうとホールを出た途端に振り出したのです。ほかにもちらほら、外に出ていた無言の修行者たちが、足を止めて「ほう…」と天を見上げる元日の午後。
そしてもうすぐ満月。玄米と野菜だけで過ごしたあとの身体は、満月が近いとは思えないくらいとても軽くて、最高のデトックス修行になったな、と思いました。
センターに着いた日は、脳が腫れているような倦怠感があり、頭がボーっとしていたのです。携帯の電源を切る直前に「新月かも!」と気がついて、アプリでチェック。前日の12/22が新月でした。
新しいことを始めるのに最適な新月。その翌日から修行を始めて、帰宅したら2日で満月。良い流れです。

 

朝食に、野菜のお雑煮が出ました。小さなお餅入り。昼食にはココナッツのお汁粉も!紅白のお団子も並んでいて、かわいい。
だんだんとおかずも増えて、日常に戻るための練習かしら?と思いました。
修行最終日の朝食後に、メッター・バーバナ(愛と慈しみの瞑想)を教わりました。そして「聖なる沈黙」が解かれて、おしゃべりの時間を与えられました。昼食のカレー(高野豆腐入り)をいただきながら、たくさんの方とお喋り。
明日の朝はタクシーを呼んで、駅まで一緒に行きましょう!と声をかけていただき、いよいよ帰宅できるのだとほっとしました。
乾燥してボロボロになった爪を整えたり、コンタクトレンズに目を慣れさせたり。社会に出る準備を整えました。

 

最終日、最後の瞑想を終えて、掃除をしました。
私の担当は「ミニ瞑想ホール」
修行中、一度も耳にしなかったその名前。どこにあるんだろう?
ボランティアの方に場所を教えていただき、向かってみると、ホールと言うにはあまりにも小さな建物でした。
「昔はここで瞑想してたんですよ」と教えられました。
せいぜい6人くらいしか座れないくらいのスペース。
すきま風と床からの冷気でとっても寒い和風の部屋。アルミシートの上にゴザが敷いてあり、男女の仕切りはあるものの、半ば物置と化しているようでした。
これが、なんだかとてつもない「気」の溢れる場所だったのです。
今回の修行中も、英語での講話を聞く方が、使っていたとのこと。イギリスからの留学生のRちゃんと一緒にお掃除しました。

 

私達が10日間を過ごした大きな瞑想ホールは60人が座っても余りある、体育館のような広さ。たくさんの人の想いがそこに溢れ、静かながらも壮大な宇宙を感じました。
対してこのミニホールは、時が止まっているような佇まい。寝袋やテントなど、生活感のあるものの置き場所になっているようでしたが、動きはまったく感じられず、漂うのはただ静けさばかり。この静謐さは…なんとなく「墓地」に漂う穏やかな静けさだと思いました。
その部屋は、多くの人に忘れ去られることをものともせずに、凛としているように感じました。
丁寧に掃除をしていると、迎えのタクシーが来る時間が近づきました。

 

記念写真を撮る人などいません。
ただ静かにセンターに別れを告げて、駅に向かいました。
タクシーで相乗りしてくれた方とお喋りしながら、新宿へ。
都会の喧騒は、ちょうど良いリハビリになりました。ミロードで早めのランチをゆっくりいただいて家に帰り、片付けをしてから車で子どもたちのいる夫の実家へ。
(※几帳面な夫のおかげで、私がいる時よりも家がピカピカになっていました)

 

 

あれだけ心配していた子どもたちは、私が10日ぶりに帰宅しても玄関に飛び出して来ることもなく、夫の実家でいとこ達と楽しい日々を過ごしていました。「ただいま!」と言っても誰も気付かず、迎えに来ません…
そして開口一番、息子に「あ、おかあさん!今から西友行くの!来る?」と言われました(笑)
まるで昨日も一緒に過ごしていたかのように。

 

娘は、私と離れるのが初めてのことで、さすがに心配だったようです。
私が自宅で寝た形跡がないことを確かめ「どこで寝てたの?」
「千葉県だよ」と言うと「何食べたの?」「車で行ったの?」「お布団あったの?」と質問攻めに合いました。
また、今まで、あっちに転がりこっちに転がり寝相が悪かったのに、私にぴったりとくっついて寝るようになり、出かけた先でもやたらと私にまとわりついて話しかけてきます。これまで、夫にベッタリだったのに。
息子は「さみしくなかったよ!お正月に帰るって言ったから」
私が帰ってくると、信じて待っていたようです。

 

当たり前のように、いつもの日常生活が始まりました。
愛と慈しみを置き去りにしないように、千葉での日々を思い出しながら。
またいつか行けたらいいな。今度は子どもたちと一緒に。

 

あの場所で出会った皆様、応援・協力してくれた家族、素晴らしい経験を、そしてそのきっかけを与えてくださったすべての方に感謝の気持ちを込めて。

 

Om Shanti.