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コーヒーとクスノキ、リセットの仕方 馬場健一

休憩時間にコーヒーをいただくのが生活のなかでホッとひと息つける瞬間だ。

白い湯気と香ばしいあの匂いを嗅ぐと自然にため息がもれる。

最近、新たに息ぬきの仕方を見つけて嬉しい。

それは森林公園で拾ってきたクスノキの小枝を削ること。

机の引き出しからハサミを取り出して丁寧に木の皮を削いでいく。

表面の濃い茶色の皮が削がれて、中から薄い茶色の木肌があらわれる。

木肌の色の変化もワクワクするし、何よりも木と刃に生じるほどよい抵抗感が手のひらに伝わってくる感覚が何とも気持ちが良い。

職業柄触覚に関しては、人より敏感・繊細だと気づいている。

木肌に鼻を近づけてみれば子供の頃、実家のタンスの引き出しの中で嗅いだことのある独特の匂いがする。

さらに削られた木くずに火をつける。

小さな炎がうまれ、すぐに消えるとつづいて細く白い煙が立ちのぼる。

毎回ちがう形を描きながら空間に消えていく・・・

クスノキの姿が最後には煙となり部屋の中をさまよう。

そして微かに残る匂いが僕のからだに静かに触れてくる。

田舎に帰省していた少年時代の夏休みの体験を想起させる。

青く広い空の下でおひさまと白い雲と一緒になっておもいっきり遊びまわっていた。自由なあの頃の感覚が懐かしい。

そう思い出したら自分の吸う息が一気に深まり、つづけて再び自然にため息がもれた。

コーヒーとクスノキに触れられたことでからだに溜まっていた疲労感が少しだけ軽くなったように素直に思えた。